305bbcaa.jpgよだれかぶれを放っておいたら……! 赤ちゃんの皮膚のバリア機能低下によるアレルギー発症について、西鎌倉こどもクリニックの下田先生のお話です。

西鎌倉こどもクリニック 院長 下田 康介
2014年2月21日

Aくんは10月生まれで、上に遊び盛りの3歳のお姉ちゃんがいます。お父さんは中学生まで喘息がありました。お母さんにスギ花粉症があります。完全母乳で発育は順調、4ヵ月健診で軽い乾燥肌と口のまわりからほっぺにかけての湿疹を指摘されました。ヒルドイドソフトという保湿クリームとキンダベートというマイルドクラスのステロイド軟膏が処方されました。家事やお姉ちゃんの世話などで忙しく、保湿クリームはお風呂上りに塗るのが精一杯。また、ステロイドはやはりなんとなく使いたくないので、皮膚科に行ってアズノール軟膏をもらいましたが、かゆがっていないし、いわゆる「よだれかぶれ」みたいなものだから、あまり使いませんでした。

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Aくんが6ヵ月を過ぎたころ、お母さんがカゼをひいて市販の総合感冒薬を飲んだため、一時的に母乳をやめてミルクを飲ませました。直後から顔が赤く腫れ、からだにもあちこちじんましんが出現しました。すぐに小児科を受診したところグレード2のアナフィラキシーと診断、血液検査で牛乳に対するIgE抗体の測定値が20ぐらいありました。牛乳・乳製品の食物アレルギーのため少なくとも6ヵ月は完全除去することになりました。

Aくんは離乳前で、彼自身牛乳・乳製品を口にしたことはありません。それなのにどうして最初のミルク(ミルクは脱脂粉乳という牛乳を原料にしたものからつくられています)に反応したのでしょうか?アレルギーの症状というのは、まずアレルギーの原因物質とからだが反応してIgEという抗体がつくられ、敏感な状態(これを感作:「かんさ」といいます)になっている必要があります。お母さんが飲んだり食べたりした牛乳・乳製品が母乳を経由してAくんのからだに入って敏感になっていたのでしょうか?

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都内の大きな病院の小児科で317名の赤ちゃんを出生時から1年間追跡調査をしました。1歳までにアトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃんが62名、食物アレルギーと診断されたのは32名でした。

食物アレルギーと診断された32名の赤ちゃんの75%以上が生後6ヵ月までに卵白や牛乳に対して敏感な状態になっていました。これは、赤ちゃんの腕に卵白や牛乳のエキス液をたらして、専用の針で浅いひっかききずをつけ15分後に赤さや腫れの大きさから判定する皮膚テストで調べたのです。血液中にIgE抗体をたくさんもっていると、強い反応がでます。陽性反応の原因としては、卵白が98%と圧倒的に多く、次に牛乳の16%でした。

この食物アレルギーの赤ちゃん32名のうち24名は生後3ヵ月までに湿疹がありました。そして生後3ヵ月までの湿疹は、秋生まれの赤ちゃんに多かったのです。秋生まれの赤ちゃんは、生後間もなく乾燥した日々が続く冬を迎え、皮膚の角質層の水分が減少し、皮膚のバリア機能が低下して「よだれかぶれ」とか「乳児湿疹」とか呼ばれる状態が治りにくく、また悪化しやすいのです。

body_rinpakyu300この湿疹のようなバリア機能が低下した皮膚から母乳中のアレルギー原因物質(抗原といいます)が容易に侵入して、皮膚にいるリンパ球という細胞が抗原と結合するIgEというアレルギーの抗体をつくり始めます。この現象を「経皮感作」と呼び、最近アレルギーの病気が発症するメカニズムとして注目されています。

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この都内の病院の調査などをまとめると、アレルギーの病気のハイリスクは、

  • アレルギーの病気の家族歴(とくに両親)
  • 秋生まれ
  • 第2子あるいは第3子
  • 生後3ヵ月までの湿疹
  • 完全母乳
  • アトピー性皮膚炎では男児

Aくんはすべてのリスクに該当しています。私が都合のいいようにお話を作ったのではなく、実際の患者さんのことを紹介したものです。

横浜市大の皮膚科教授相原先生によると、第2子以降のほうにアトピー性皮膚炎が多いのは、上の子に手をとられて下の子の飲みこぼしや食べこぼしをすぐ拭いてあげられないことが関係している、とのことです。

母乳栄養はアレルギーの病気予防にいいのではないかと考えている方には、意外な結果かもしれません。あるいは授乳中は母親が食事制限をして母乳中のアレルギー原因物質を減らしたほうがいいのではないかと思う方もいるかもしれません。現在、アメリカ小児科学会でも日本の小児アレルギー学会でも母親の食事制限が有効というデータはないという見解です。

baby_massage300やはり生後3ヵ月までの赤ちゃんの皮膚のバリア機能をいい状態に保つことが重要です。先ほどの都内某病院の小児科アレルギー専門医は、「少なくとも1歳までのアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの発症については、3ヵ月までの湿疹の有無で予想できる」と述べています。

1ヵ月健診は、産婦人科の病院で非常勤の小児科医による形式的なものになりがちです。2ヵ月で「ワクチンデビュー」するときに、リスクファクターのチェックと早期からのスキンケアの指導を受け、経皮感作の機会を減らしましょう。3〜4ヵ月健診では遅いのです。

※「経皮感作」についての補足はこちら >>経皮感作Q&A

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2014年02月23日 │ コラム  │ コメント(0)│ トラックバック(0)

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