305bbcaa.jpg赤ちゃんの細菌性髄膜炎を予防するHib(ヒブ)ワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンについて、西鎌倉こどもクリニックの下田先生に最近の動向をお伺いしました。

西鎌倉こどもクリニック 院長 下田 康介
2010年5月14日

今回はヒブ(Hib)ワクチン(商品名:アクトヒブ)と小児用肺炎球菌ワクチン(商品名プレベナー)についてお知らせします。

ヒブワクチンは2008年から、肺炎球菌ワクチンは今年2010年2月から日本で接種が始まりました。両者共に細菌性髄膜炎という重大な病気を予防することが目的です。特に0歳から1歳児がかかることが多く、発熱、不機嫌、嘔吐などふつうのカゼと見分けがつかない症状で始まり、進行が早く、早期診断・早期治療が困難な病気です。欧米や中国などのアジア諸国など世界100カ国以上では以前から実用化され、多くの先進国では公費負担による定期接種となっていましたが、日本では国民皆保険制度で医療機関にかかりやすく、すぐれた抗生物質で治療すれば大丈夫という「油断」があったため、患者さんが年々増えているにもかかわらず、導入が遅れていました。

また、ヒブ菌も肺炎球菌も最近はどんな抗生物質も効かない「多剤耐性菌」が増えて、抗生物質を使えば問題はないという時代は終わりました。たとえば、ヒブ菌による細菌性髄膜炎の統計から推測すると、人口約18万人の鎌倉市では、毎年20人近くの子どもさんがこの病気にかかり、5%が死亡、20%前後に難聴やてんかん発作など重大な後遺症が残ります。患者さんの半分以上が0歳から1歳児で発病のピークは生後9カ月です。肺炎球菌による髄膜炎は「電撃型」と言って、もっと急速に時間単位で病状が悪化することもあります。

ヒブ菌や肺炎球菌は、保育所など集団生活を始めると1ないし2か月のうちにほぼ全員の子どもさんのノドや鼻に定着し、いわゆる「保菌者」状態になることがわかっています。これらの子どもさんから、咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、鼻副鼻腔炎、肺炎そして最重症の病気として菌血症や髄膜炎が発症してきます。

生後3ヶ月から従来の定期接種としてBCGと三種混合ワクチンが始まりますが、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンは生後2ヶ月になったら接種できます。できれば、生後6ヶ月ぐらいまでにはヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンを済ませておきたいものです。赤ちゃんにとっては、このあいだの「新型インフルエンザ」より怖い病気だからです。三種混合ワクチンと同じ日に接種する「同日接種」のスケジュールをお勧めします。BCGやポリオもタイミングをみて、接種をすすめることが可能ですから、かかりつけの小児科医と相談しましょう。

残念なことに、日本ではヒブワクチンも肺炎球菌ワクチンも「任意接種」扱いで保護者の方の自己負担です。ヒブワクチンは1回7000〜8000円、肺炎球菌ワクチンは1回10000円ぐらいかかります。生後2ヶ月から両方を接種すると、合計70000円以上と大きな負担になります。ただ、適当な例ではないかもしれませんが、クルマの保険より大事な我が子への「保険」と考えていただければよいでしょう。なお、ヒブワクチンは供給量が依然として限られていますので、早めの予約が必要です。肺炎球菌ワクチンは順調に供給されています。

満1歳のお誕生日が来て麻疹・風疹のMRワクチンを受けるまでに、BCG,3回の三種混合ワクチン、3ないし2回のヒブワクチンと肺炎球菌ワクチン、1回のポリオの接種を終えておくことを強くお勧めします。

高速道路の割引や、新しい新幹線はいらない、そして高校の授業料無料化の前に、子どもたちのワクチンを無料に!すべての小児科医の願いです。

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