305bbcaa.jpg2009年の新型インフルエンザ(ブタ由来のH1N1型)とワクチン接種について、西鎌倉こどもクリニックの下田先生によるお知らせをまとめました。
ワクチン不足や小児の接種スケジュール前倒しなど、医療現場で混乱が起こる中で書かれた、当時の最新情報です。

西鎌倉こどもクリニック 院長 下田 康介

2009年11月06日

神奈川県のホームページによると、基礎疾患のある方に対する新型インフルエンザワクチンの接種は、11月16日から開始するとありますが、実際にワクチンが医療機関に配布されるのは数日遅れる予定です。当クリニックでは22日、23日の連休明けより、主に喘息のこどもさんに接種を行う予定です。

厚生労働事務次官による「受託医療機関における新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種実施要領」という通達によると、「喘息として軽症の場合でも、重症肺炎やインフルエンザ脳症の発症も報告されている。そのため、主治医の判断で、気管支喘息で継続して治療を受けているか、治療を受けなくても経過観察のために定期的に受診している患者、現在は寛解状態にあるが5年以内に喘息で治療を1年以上定期的に受けた既往のある患者を優先する。」となっています。

つまり、医師の判断が必要とされ、保護者の方が電話等で「喘息の既往があるから」と、予約を取ることはできません。実際に受診していただき、喘息に罹患しているあるいはその既往歴があり、上記の通達に合致しているかどうか、カルテの記載や保護者の方からの情報を確認して医師が「優先接種対象者証明書」を発行するか判断します。

国が管理するワクチンで、かつ医療機関への供給の見通しも不透明な現状ですので、この事情をよく理解していただき、ご面倒でも受診したうえで接種を受けるようにしてください。受付の事務員とのやりとりでは、優先接種対象者かどうか決定できないため、通常のワクチンのような「予約」は取れません。ご協力をお願いします。


2009年11月13日

新型インフルエンザワクチンの続報です。11月13日に基礎疾患を有する方たちに接種する新型インフルエンザワクチンが入荷してきました。あらかじめ申請していた人数に対する一部のみで、残りのワクチンがいつ、何人分配布されるのか、まったく見通しは立っておらず、その日になってみないとわからないという現状です。今回のワクチンの接種を受けるには、かかりつけ医の署名・捺印がある「優先接種対象者証明書」が必要です。ワクチンの供給がはっきりしないこと、誰が「優先接種対象者」なのか医師が判断すること、などの理由により、受診していただいた上で医師とご相談ください。こどもさんの体調に問題がなければ、その場で「証明書」を発行し、接種します。

なお、習い事、学習塾、あるいは部活などで診療時間内に受診できないとおっしゃる方もいますが、事はパンデミックに対して重症化を目的に緊急に作られたワクチンの接種ですから、諸事繰り上げていただくというのが道理ではないかと考えます。供給量がその日その日で限られていますので、必ずしもご希望の日や時間帯にそえないこともあります。ただ、保護者の方が来院していただき、「優先接種対象者証明書」だけ受け取り、こどもさんはご都合の合う日取りに他の医療機関で接種することは可能です。この場合は他の医療機関へ予約・申し込みが必要となります。

当院は原則としてインターネットによる受付ですが、かかりつけにされている方に対しては、インターネットによる受付が入らない、あるいは締め切りとなってしまった場合でもできるだけ対応させていただきますので、電話か、あるいは直接窓口に来ていただきご相談ください。よろしくご理解の程をお願いします。


2009年11月16日

新型インフルエンザワクチンの続報、その3です。11月16日付けの報道で、東京都など一部の都府県では、1歳から小学校就学前あるいは小学3年生までの持病のない方への接種が「前倒し」の処置により開始されたようです。持病のない幼児に重症者や死亡するケースが相次いで報告されているため、「持病」のある方へのワクチンを子どもたちにまわして行う措置で、新たにワクチンが十分供給されたわけではありません。

実際ほとんどの医療機関では、ワクチンの供給が最初から不十分で、新たな入荷の予定も当日になってみないとわからない状況のため、持病のない子どもたちへ「まわす」ワクチンが無いため混乱が生じているようです。神奈川県では、いまだ「前倒し」の措置は講じられていません。小児科専門の医療機関では、喘息などの持病がある子どもたちへのワクチンしか配布されておらず、1歳から就学前の子どもたちの分としてまわせる余裕はまったくありませんので、現段階では近い将来神奈川県でも始まると予想される「前倒し」分の予約を受け付けることは不可能です。

当クリニックでは、先週13日に120〜140人分のワクチンが入荷し、13日と14日の2日間で喘息の子どもさんたち34名に接種しました。次回の入荷予定あるいは入荷量は、不明です。喘息あるいは喘息の既往が5年以内にあり当クリニックをかかりつけにしている方は、なるべく早く接種されることをおすすめします。神奈川県でも「前倒し」が始まると、持病のある子どもたちの分を、1歳から就学前の子どもさんへまわして接種する事態が予想されます。これは、持病のない幼児でも重症化する可能性があること、新型インフルエンザワクチンは開封すると24時間以内に使い切る必要があり、あまったワクチン液を翌日以降に持病のある子どもさん用に保存することができず、当日中に使い切ってしまう必要があるからです。保護者の方の冷静な対応をお願い申し上げます。


2009年11月21日

みなさん、こんにちは。去る11月13日に入荷した新型インフルエンザワクチン第1回目は、本日21日に合計215名の優先接種を済ませ、なくなりました。みなさんのご協力で大きな混乱もなく、喘息の子どもさんたち等へ接種できましたことを感謝いたします。第2回目のワクチンは連休明けの24日火曜日に入荷する予定です。また、第3回目のワクチンは12月7日に配布される予定です。ワクチンの量としては、12月24日に年内でもっとも多い量が入荷すると聞いていますが、年末のお休み直前でもあり、子どもさんへの感染が続いていることから、少し早まるかもしれません。

2回目に入荷するワクチンは、引き続き優先者の方への接種分となります。1歳以上から就学前の子どもさんへの接種は、12月7日の3回目の入荷分から始める予定です。電話による予約で「早い者勝ち」のかたちで連日接種を行うと、通常の診療に大きな支障が出でしまい、またワクチンがすぐに無くなり優先接種の方の2回目のワクチンが確保できなくなるおそれがあることなどの事情から、今のところ、毎週木曜日の午後2時から4時までの枠と金曜日午後2時から4時までの従来からある「予防接種外来」の枠に限らせていただいて接種を行うよう検討中です。ワクチンの予定量がなくなり次第、電話で問い合わせをいただいても次回の入荷まで待っていただく可能性がありますので、あらかじめご了承ください。

なお、1歳未満のお子さんがいらっしゃるご両親に対する接種は、神奈川県の公式の発表があり次第始めたいと考えていますが、ワクチンの数に限りがありますので、当院にかかりつけの子どもさんのご両親優先でご案内せざるを得ません。「かかりつけ」とは、乳児健診や通常の予防接種で来院されたことがある、あるいは赤ちゃんのご兄弟・姉妹が当院で受診したことがあるという意味です。引き続き皆さんのご協力をいただければ、幸いです。

2009年11月24日

本日24日に予定していた新型インフルエンザワクチンが入荷せず、多くのみなさんにご迷惑をかけ申し訳ありませんでした。ワクチンの納入を担当する卸業者の情報によると、鎌倉市当局にはワクチンは来ているけれども各医療機関別に数量を仕分けする作業が終わっていないため、配布できないということでした。今後の予定はまったく目途がたっていませんが、12月の7日前後ということです。子どもさんたちで感染拡大が持続している現状では、市当局の迅速な処置や成人の優先者向けのワクチンを小児にまわすなどの措置を強く望むところです。

報道等でご存じの通り、このワクチンには10.0mlという通常の10倍量が入ったボトルがあり、当クリニックにも3本配布されました。24時間以内使い切らないといけないため、予約の方用に保管しておくことが不可能という不便なものです。このボトルの配布は不評のため年内分で打ち切るとの報道もあります。鎌倉市でも集団接種の場を設けるなど、ワクチンの有効な接種方法をぜひ実施してもらいたいと思います。


2009年11月30日

妊婦さんや持病のある子どもたちへの最優先接種に加えて、12月7日より小児への接種が「前倒し」で開始されるようです。鎌倉市医師会では、12月1日申し込み開始で12月13日より毎週日曜日に地域の小学校や市役所を会場に1歳から就学前あるいは小学校3年生までの児童に対する集団接種が始まります。鎌倉市医師会のホームページから申込書をダウンロードして郵送もしくはFAXで送付、医師会から子どもさんの接種日時と場所の連絡が後日送られてきます。詳しくは上記医師会のホームページからチェックしてみてください。

先週は結局ワクチンの入荷はまったくありませんでした。各医療機関で最優先者の方への第1回目の接種自体がまだ終わっていないこの時期に、次の接種順位である小児の「前倒し」分がまもなく始まろうとしています。新型インフルエンザワクチンの接種の意義は、そもそも発病を阻止するのではなく、重症化を防ぐことにあります。重症化する懸念がある妊婦さんや持病のある子どもたちへの接種が始まったばかりの段階で、ほぼ同時進行のかたちで集団接種が行われるのは、持病のない子どもたちの脳症や重い肺炎が相次いで報道された経緯があるためと考えられます。

こうなると、鎌倉市では小学校3年生までの子どもさんでは、持病があるなしにかかわらず、限りあるワクチンは「早い者勝ち」で接種するという事態となり、混乱が予想されます。各医療機関も通常の診療と従来からの予防接種さらに新型インフルエンザワクチン接種業務と、「二重苦」「三重苦」のオーバーワークに医師、看護士、医療事務担当者などスタッフの負担は限界に来ています。持病のある方への最優先接種分を確保し、「前倒し」に該当する子どもさんたちはなるべく集団接種にまわっていただくという流れになって行かざるを得ないと思います。

次回のワクチン配布の予定は12月7日前後ですが、配布の不足や遅れのため接種を待っていただいている方あるいは「優先接種者証明書」をお持ちの方たちから接種させていただく予定です。


2009年12月15日

これまで2回の新型インフルエンザワクチンの配布があり、合計448名の方への接種が終わりました。みなさんのご協力とご理解に感謝します。

さて、12月18日の金曜日に第3回目のワクチンの配布があります。およそ800人分の予定です。金曜日の午後から接種を始めます。

喘息などの持病があり、まだ接種を受けていない方や2回目の接種をお待ちの方が最優先となります。次に、集団接種の機会の無い受験生の方(ただし、当クリニックへの通院歴がある方のみ)と1歳未満の赤ちゃんがいらっしゃるご両親への接種を優先したいと思います。今までより多くのワクチンが納入される予定ですので、集団接種を受けられなかった1歳から小学3年生までの方たちも受け付けたいと考えています。インターネット受付を済ませて来院してください。ネットの受付がいっぱいの場合、電話で問い合わせ・確認のうえ、来てください。

国立感染症センターの発表では、新型インフルエンザの流行はピークを越えたのではないかと言われていますが、当クリニック周辺では依然として患者さんの数は減っていません。肺炎を合併したり、喘息発作を起こして重症になりかける方が毎週数人見られます。年末年始の外出には、注意が必要です。

大船方面では、季節性のB型にかかった子どもさんの報告が数件ありました。季節性ワクチンは若干の在庫がありますので、ご希望の方はお問い合わせください。


2009年12月25日

新型インフルエンザは患者さんの受診がピークを過ぎたような印象ですが、成人特に30代の方と1歳前後の乳児の方の発病が増えてきています。これまでは子どもさんが発病してもお母さんたちは無症状で終わるというパターンがほとんどでしたが、最近2週間ほどは親御さんが発病して、赤ちゃんにうつる組み合わせが目立っています。

現在はパンデミックの第1波で小児の30ないし40%が発病し、来年に小康状態をはさんで第2波が来ることが確実視されています。このパンデミックが本当に終わるのにまる3年かかると予想され、1960年代にみられた「香港かぜ」のパンデミックに経過が酷似しています。「香港かぜ」の時には第2波の方が重症者や死者が第1波より多かったので、今回もまだ警戒が必要です。

第1波がピークを越えて、嘔吐下痢症とRSウイルス感染症が今週急に増加してきました。嘔吐下痢症は軽症の方が多いのですが、RSウイルス感染症は1歳未満の赤ちゃんでは重症になりやすく、簡易検査が外来診療では健康保険が効かない制度になっており、早期診断がむずかしいのが現状です。ごく少数ですが、小児科医側の自己負担で検査を実施しているところがあります。

さて、今月新型インフルエンザワクチンが2,000人分以上大量に配布されました。インターネットの受付だけではなく、電話による予約も可能です。当クリニックがかかりつけでなくても、かまいません。輸入ワクチンに懸念をお持ちの保護者の方たちも接種できます。なお、2010年の1月17日から毎週木曜日午後に新型インフルエンザワクチン接種のみの外来枠をもうけました。診療時間帯での接種は従来通りです。


2010年1月17日

新型インフルエンザは年末年始に患者さんが激減し、報道される機会もめっきり少なくなりましたが、今週(12日から14日)新たに4名の方がA型インフルエンザで受診されました。大学生、中学生、小学6年生などで、昨年の夏から秋の患者さんの年齢分布に似ていることから新型インフルエンザの第2波の始まりの可能性もあります。

今回の新型インフルエンザウイルスは弱毒性で、過去のパンデミックを起こした新型インフルエンザウイルスより感染力や毒性が弱いことがわかってきました。しかし、インフルエンザウイルスは数週間など短期間で変異しやすいこと、過去のパンデミックが第1波だけで終わった例がないことなどを考えると、引き続き警戒が必要です。

ワクチンの在庫は現在余裕がありますので、第2波の前にワクチン接種をしておかれることをおすすめします。とくに、昨年の大流行期に発熱して簡易検査を実施せずにインフルエンザと診断された方やご兄弟など家族の方が発病したのに無症状で終わっている方などは、これで新型インフルエンザは終わったと考えずに、ワクチン接種をしておいた方が安心です。大阪の高校生の集団感染を詳しく調査した結果、繰り返し感染を受けて、同じ集団でも発病する時期は人によって異なることが分かってきたからです。

2月以降は、一般の方が国産ワクチンと輸入ワクチンを選択できるようになりますが、国産ワクチンの品不足が必ず起こると推測されます。

なお、インフルエンザに代わって、溶連菌感染症、水痘、ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)などの患者さんが増えてきています。

また、今月から子宮頚癌のワクチンが接種できるようになりました。10歳以上の女児が対象で、1回15000円で6ヶ月間に3回の接種が必要と高価なワクチンですが、効果が6年以上続きます。癌が初めてワクチンで予防できるようになりました。日本では初めてですが、世界の国々では広く接種されています。性交渉の年齢が低年齢化し、かつ晩婚化がすすむ日本でも、5年後あるいは10年後には子宮頚癌は現在より増加するのは確実と思われます。小学5年生以上の女の子がいらっしゃる方は、ぜひご検討ください。

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