305bbcaa.jpg最近増えている「小児の低体温とその原因」について、いくた小児クリニックの生田先生にお伺いしました。低体温にしないために気をつける7項目は、テーマに対する先生の「あったかい」まなざしを感じます。

いくた小児クリニック 院長 生田 孝一郎
2010年10月12日

近ごろ、保育園・幼稚園・学校への登園・登校後、遊ばずにじっとしている子や、集中力に欠け、落ち着きがない子、すぐにカーッとなる子が目につくようになりました。その原因の1つに「低体温」があげられます。

子どもの低体温が注目されたのは、日本体育大学の正木教授が「子どものからだの調査'90」として全国の保育園児から高校生を対象に行ったアンケート調査を平成2年に公表してからです。20年前の調査と比較して、朝の体温が36度に満たない子どもが非常に多くなっていることを指摘しました。この原因はどのようにとらえられているのでしょう。

体温には朝・昼・夜と、24時間単位のリズムがあります。これを「概日リズム」といいます。1日のうちで早朝が最も低く、しだいに上がり、夕方が最も高くなります。

平熱がどのくらいの場合に低体温というのかはっきり決められているわけではありません。とりあえず一般に小児の平熱が36.5〜37度前後だとすると、36度未満を低体温といってさしつかえないでしょう。

低体温が増えた理由のひとつは、子どもの運動不足による基礎代謝量の低下が指摘されています。以前と比較し子どもの活動量が激減し、1日の必要エネルギー量は、小学校高学年で以前は1600〜1800キロカロリーが標準だったものが、現在は1000キロカロリー前後の子どもも珍しくありません。疲れやすい、だるいという子どもに、早寝早起きの励行と十分の運動により症状がとれてくるケースは少なくありません。これらの子どもの多くは、概して朝低体温の傾向にあります。

子どもたちに増えている低体温や、自律神経の正常な発達を妨げているのは、夜更かし、朝寝坊といった生活リズムの乱れだけでなく、過保護、運動不足が大きく関係しているようです。その原因を探ると、幼児期から小児期における自律神経系の発達と関係しているようです。特に2〜5歳の最も活発に動き回る時期に、その行動を制限しすぎたり、外遊びを抑制しすぎたりすると、本来獲得すべき機能がきちんと身につかないことがあります。

冷暖房の普及により快適な環境が得られたものの、暑いとか寒いとかの感覚を覚える機能が十分に備わらないと、寒ければ体を震わせて体温を上昇させ、暑ければ汗を出し体温を下げる、そういった普通の反応が起こりにくく成長してしまいます。家にこもってばかりいて運動をしなければ筋肉の量も減少し、結果的に熱の産生量が低下します。

ますます少子化が進み、「子どものペット化」が顕著になるにつれての現象かもしれません。子どもの自立を促し、運動不足を解消させ、規則正しい生活を送らすことが何より大切でしょう。

まれですが、元気そうに見えても体温が低くなる病気に甲状腺機能低下症などの病気があります。この場合、寒がる、活気が無い、便秘になりがち、皮膚の乾燥がひどい、身長の伸びが悪いなどの症状がみられます。診断は血液検査で比較的容易ですので、気になる方は、かかりつけ医にご相談ください。

以下に、子どもを低体温にしないために気をつけるべきことをまとめました。

  1. 生活リズムの乱れは低体温の重要な原因。
    起床、食事に始まり、活動(あそび・勉強など)、休憩、就寝にいたる生活行動を、私たちは毎日周期的に行っており、そのリズムを生活リズムと呼んでいます。生活リズムの乱れは、低体温の重要な原因と考えられます。
    1日の生活リズムは睡眠・食事・運動の3つのサイクルで構成されていて、これらのうちの1つでも正常でない形になると生活リズムが乱れてしまいます。自律 神経をきたえ、低体温などの体温異常から脱け出すには、以下のようなことを心がけ、生活リズムを正常な姿にしていくことがポイントとなります。
  2. 早寝早起き。睡眠はしっかりと。
  3. 朝食は毎日食べる。勿論昼と夜も。
    「朝食抜き」も一因といわれています。朝食は睡眠中に下がった体温を高める役割があります。しかし、塾通いや遅い夕食により朝食をきちんと食べられない子どもが増えています。朝食をきちんと摂ることは、子どもの体を冷えから守り、健康な成長をもたらす基本といえます。
  4. 体を動かして基礎代謝を上げましょう。
    昔に比べ、外で遊びまわる機会が格段に少なくなり、体温をつくり出すために必要な運動量が減ってきています。体を十分に動かすことは熱エネルギーをつくり出すとともに筋肉を鍛えて血液循環を活発にします。その結果、酵素の働きが活性化して体内に十分な栄養が行き渡り、すこやかな成長を促します。
  5. 冷暖房は程々に(特に冷房は注意!!)。
    最近の子どもたちは、生まれたときからエアコンの中で育ち、そのせいで自律神経機能が発達しにくいといわれています。未発達な自律神経は体温調整機能を低下させる原因となります。快適な環境がかえって人間の能力を下げてしまっているのです。
  6. 放課後は友達と仲良く遊ぶ。
    運動については、低年齢の子供たちの場合、午前中のあそびだけでも生活のリズムは整いますが、年中児以降の場合、お昼には体力が回復するので、体温がピークになる午後3時〜5時には努めて体を動かすことが有効になってきます。
  7. 子どもは子どもらしいのが一番大事。

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2010年10月12日 │ コラム │ コメント(0)

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